VIPやハイローラーは、収益面でカジノに大きな影響を与える重要顧客です。しかし、その獲得・受け入れ・滞在運用には高度な段取りと専門知識が欠かせません。そこで存在感を発揮するのがジャンケットです。
ジャンケットは、渡航手配から会員登録、VIPテーブルの確保、通訳や送迎、清算サポートまでを一本化し、優良な顧客を安定的にカジノへ橋渡しします。プレイ結果に介入しない中立性を保ちながら、体験の摩擦を減らすことで滞在価値を高めるのが役割です。

カジノ側の視点で見ると、ジャンケットの有用性はまず「予測可能性」にあります。ジャンケットは事前に想定バイインや希望ゲーム、滞在時間を共有するため、VIPルームの稼働率やピット配置、人員シフトを精緻に計画できます。これによりピーク時の過密やオフピークの空洞化を抑え、テーブルリミットやミニマムの設計も無理なく最適化できます。
次に「獲得コストの最適化」です。広域に点在するハイローラーへ個別にマーケティングを打つより、信頼関係のあるジャンケット経由の送客は効率が高く、キャンセルやノーショーのリスクも低減します。
コンプ運用の透明性も利点です。ローリングの記録、リベート率、特典の引当などをジャンケットと共通フォーマットで管理することで、付与基準が明確になり、後日の齟齬や不満を避けやすくなります。また、犯罪防止の観点からも、ジャンケット側の事前審査と施設側の最終確認を二層で行うため、本人確認や資金の出所確認がスムーズになり、フロアの秩序維持に寄与します。
トラブル対応でも一次窓口を集約でき、言語差や文化差に起因する誤解を早期に解消できます。
収益面では、ジャンケットは「長く、安定して回してもらう」仕組みづくりの協力者です。混雑が落ち着く時間帯にセッションを配置したり、食事や休憩の導線を整えたりする提案は、結果的にプレイ時間とローリングの増加につながります。
VIPの同伴者向けの過ごし方を含めた全体設計も離脱を防ぎ、施設全体の売上を底上げします。さらに、ジャンケットが持つ顧客データのフィードバックは、ゲームミックスやテーブルスピード、接客言語の改善に役立ち、次の施策立案に生きます。

もちろん、丸投げは適切ではありません。カジノ側はレートや手数料、特典の条件、清算サイクルをあらかじめ明文化し、ダッシュボードで共有する体制が必要です。双方でKPI(到着から着席までの時間、席の稼働、インシデント対応時間など)を持ち、定期レビューを行うことで、送客の質と体験価値を持続的に磨けます。
ジャンケットは魔法ではありませんが、正しく連携すれば、VIPが求める「無駄のない上質な時間」と、カジノが求める「安定した高付加価値の稼働」を同時に実現する現実的なパートナーになります。